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東京地方裁判所 昭和50年(レ)186号 判決

控訴人 肥後三吉

被控訴人 大京不動産こと高橋シゲ子

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人の請求の趣旨

1  原判決を取消す。

2  被控訴人は控訴人に対し金二万五三六七円及びこれに対する昭和四四年三月一四日から支払ずみまで年五分の金員を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴人の請求の原因

1  被控訴人は昭和四〇年一〇月以降昭和四九年一〇月まで大京不動産の商号で不動産取引仲介業を営んでいた。

2  控訴人は被控訴人の仲介により、昭和四四年三月一四日訴外田中信太郎から別紙物件目録記載の建物(以下本件建物という。)を賃料月額二万六〇〇〇円で賃借し(以下本件賃貸借という。)、その際被控訴人に右仲介手数料として賃料一か月分相当額の金員を支払う約に基づき金二万六〇〇〇円を支払った。

3  本件建物は昭和二三年一月以前に建築された建物であり、地代家賃統制令の適用を受け、その賃料統制額は本件賃貸借当時月額金六三三円であった。

4  控訴人は前記仲介手数料を賃料一か月分相当額として支払ったのであるから、被控訴人は当時の統制賃料月額金六三三円を超える部分金二万五三六七円を法律上の原因なく受領したことになる。

よって被控訴人は控訴人に対し右不当利得金二万五三六七円及び被控訴人が統制令違反の事実を知って受領した日である昭和四四年三月一四日から支払ずみまで民法所定の年五分の法定利息の支払を求める。

三  被控訴人は適式の呼出を受けたが、第一、二審を通じ本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。

理由

一  被控訴人は民事訴訟法一四〇条三項により控訴人主張事実を自白したものとみなすべく、従って請求原因1ないし3項の事実は当事者間に争いがないことに帰する。

二  次に被控訴人が金二万五三六七円を法律上の原因なく控訴人から受領したかどうか判断する。前記争いがない事実によれば本件賃貸借を仲介するにあたり被控訴人は控訴人と報酬を賃料の一か月相当の額とする仲介契約を締結し、右契約に基づき昭和四四年三月一四日金二万六〇〇〇円を受領したのであるから、控訴人の本訴請求は右仲介契約の報酬金額が法律上当然に、賃料統制額である金六三三円に制限されるか、ないしは合意により同額に変更されたことを前提としなければ成りたたないものといわなければならない。ところで、控訴人は本件建物が地代家賃統制令の適用の対象となる建物であるので前記仲介契約の報酬額も当然右の金六三三円に制限変更されると主張するものと思われるが、地代家賃統制令は社会政策上借主保護の見地からその対象とする土地、建物の地代家賃額の最高限度を統制するものであって、その立法趣旨に照らし右統制令の対象となる土地、建物の賃貸借の仲介報酬額の最高限度をも統制するものとは解しえないから、控訴人の右主張は理由がなく、他に前記仲介契約の報酬金額が金六三三円に合意により変更されたとの主張・立証はない。

三  よって控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柏原充 裁判官 小倉顕 有満俊昭)

〈以下省略〉

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